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仮面ライダーアクセル6〜10話 
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█ 仮面ライダーアクセル6〜10話

Last-modified: 2015-01-09 (金) 21:31:41 / Short URL: http://wiki.nothing.sh/1605.html / add to hatena bookmark - users / add to livedoor clip - users

仮面ライダーアクセルまとめ

【目次】

6話「急造仮面ライダー」

「貴公には名乗りがまだだったな
我が名はアウトリヴァーレ、お手合わせ願おうか」
そう言うと蜻蛉の異形は片足で立っていた木から跳び下りると
四枚の羽を広げて力強く着地した。
「さて、まずは以前の戦いからどれ程成長したか見せてもらおうか」
蜻蛉の異形はまるで野に突き刺さる剣の如くまっすぐに立つとこちらを見据えて言った。
「お前は…!」
以前銀を圧倒し俺を一撃で下した相手が目の前に居る。
今の俺に勝つことは叶わなくても何とか退けることが出来るだろうか。
「前振りが長いのは嫌いでは無いが今はそういう気分では無いのでな
さあ、来い」
手を広げてこちらへとゆるりと歩み寄ってくる蜻蛉の異形に気圧されて俺は一歩後ずさった。
今のままではどう打ち込んでも勝てるイメージが微塵も沸かない。
「どうした、そう恐れずに試しにこの前の蹴りでもやってみたらどうだ?
一つ貴公がどの程度成長したかの指針にしたいから放つまでは何もしないでいてやろう」
「くっ、舐め…られても仕方ないか」
彼我の戦力差を考えればこの程度に余裕綽々で舐めてかかられるのも仕方ないところだろう。
かといって返り討ちにあうだろうことが分かっていて突っ込んでいくのも尺だ。
せめて相手の体制を崩してから急所にでも必殺の一撃を叩き込まないことには勝機は無い。
そう考えた俺は蜻蛉の異形を跳び越えて後ろから回し蹴りを叩き込んだ。
「悪く無い選択だが如何せん全てにおいて拙いのが残念だ」
蜻蛉の異形はこちらを振り向きもせずにあっさりと片腕で俺の攻撃を受けると
槍のように鋭い肘鉄を俺の鳩尾に叩き込んだ。
「うごぇ!?ち、畜生…!げほっ…うぇ」
俺は痛む腹を抑えて膝をついてしまう。
朦朧とする意識で目の前を見ると蜻蛉の異形のつま先が片方だけ見えた。
嫌な予感がして痛みに耐えてなんとか横に跳退くと俺の脳天があった辺りに
奴のかかとが振り下ろされ空を切ったかかとが地面を鋭く切裂いた。
咄嗟に無理して跳退いた俺は着地に失敗して肩から倒れこんだ。
慌てて起き上がって周りを見渡すと蜻蛉の異形が影も形も無く居なくなっていた。
風に違和感を感じて上を見上げると日輪を背に天高く片足をこちらへと向けて降り立つ蜻蛉の異形が見えた。
俺はあわてて無様に腹を押さえながらその場を転がると一拍子遅れて蜻蛉の異形がズザッという鋭い音と共に降り立った。
以前戦った兎の異形の攻撃に似ていたがそれとは比べ物にならないほど鋭く、早く、隙が無かった。
いや、それだけでは無い。
全てにおいて俺が今まで倒して来た敵とは格が違う。

俺はこいつには今のままでは勝てないことを悟り奴に背を向けて一目散に走った。
「逃げるつもりか…貴様!」
蜻蛉の異形が凄まじい剣幕で跳出してて追いかけてくる。
俺は前のめりに倒れそうになりながらも必死に走り続ける。
後ろからザザザという足音が聞こえるが俺は振り向かずに走り続ける。
どれ程走っただろうか、そのまま走り続けるとやがて目の前に瓦礫や土で埋もれているトンネルが見えて立ち止まる。
俺は肩で息をしながら後ろを振り返った。
それを見た蜻蛉の異形は走るのをやめてゆったりと歩みを進めてこちらへと近づいてくる。
「やっと観念したか?
さぁ、晩節を汚したくないなら早く向かって来い
貴公が打って出るまで待っていてやろう」
俺は蜻蛉の異形を睨み付けながら息を整えると空を見上げ風に語りかけた。
目の前のあいつに一矢報うために力を貸してくれ、と。
「はぁぁあああああ…!」
風が俺の声に応えて体の周りに集まってくる。
「――はぁっ!」
俺は吹き上げる風に乗って高く高く跳上がる。
地表を見下ろしただ一点を見据える。
蜻蛉の異形が地上で叫ぶ。
「それでいい!さあ来い!
「残念そっちじゃなくてこっちだぁああ!」
俺はトンネルを閉ざす瓦礫に向かって急降下した。
瓦礫が砕け散り土と瓦礫片が飛び散る。
手を大きく広げて待ち構えていた蜻蛉の異形が驚愕かそれとも落胆か
異形の仮面の上からでは読み取れないがこちらを見つめていた。
だがそんなことには構わずに俺は変身を解いてトンネルの中へと走っていった。
「最後の一手が逃亡のためか…全く、失望させてくれるな」
暗い暗いトンネルの闇の中を一人走っていると遠く後ろで蜻蛉の異形が一人ごちた。
奴は俺が逃げ出したと思ったらしい。
確かにこの状況を見ればそう思うのも当然かもしれない。
だが奴はそれは大きな勘違いだということを知ることになるだろう。
俺は目的のモノを見つけると立ち止まり意識を集中した。
「変身!」

「む、この音は…」
蜻蛉の異形がこいつの音に気付いたようだがもう遅い。
「イィィイイイイヤッホォォオオウ!!」
トンネルの中でたっぷりと加速をつけて擦れ違い様に
サイドにまるで日本刀の様に鋭利な短いブレードの付いたカウルで切裂かんとギリギリまでバイクを寄せる。
「ぐっ!」
蜻蛉の異形は腕で受けるがバイクのブレードに切裂かれて赤黒い血が周りに飛び散る。
俺はそのまま走り抜けて距離をとるとUターンして止まり蜻蛉の異形に向き直った。
「ほう、そいつに跨っただけでさっきまで殻を被った雛だった者が二倍にも三倍にも見えるとはな…
なるほど…【仮面の騎兵】仮面ライダーとはよく言ったものだな…!」
「仮面…ライダー?」
俺は聞きなれない単語に首をかしげた。
「む、貴公の仲間のウェイブがそう名乗っていたが貴公は違うのか?」
言われて見れば銀と最初に会ったとき蝙蝠の異形相手にそんなようなことを言っていた記憶があった。
どんな意味で言っていたかはあの状況に面食らっていたためよく覚えていないが確かにそう言っていた気がする。
「あ、うん、そうそうそれそれ!
俺とこのバイクで仮面ライダーだ!
急造タッグだが俺達の力を甘く見ると痛い目を見るぜ!」
俺はなんとなく言葉の響が気に入ったのとライダーという単語が入っていたのと
銀と同じ称号というのが気に入ったので肯定しておいた。
さて、こうやって勢いよく飛び出して啖呵まで切ったのだが正直に言って旗色は悪かった。
なんとか回収出来た銀のバイクだがトンネルの中に放置してあったため案の定調子は最悪だった。
ぱっと見た感じは以前銀が変身したときに乗っていたバイクではなく俺が変身したときと同じデザインになっていた。
ただし細部は違うし特に色は大きく違っていて変身前と同じ白く美しいカラーリングだった。
今も時々ブスンブスンとエンジンが変な音を出したりさっき走らせたときも動きにキレが無かったり
正直なところ一緒に変身して色々と弄るか何かされて辛うじて動いてるのだろう。
あまり長くは持たない、なんとかして隙を見つけて起死回生の一撃を叩き込むしかない。
「面白い奴だ…来い!」
蜻蛉の異形がこちらを見据えて構えなおす。
俺はバイクを労わる様にゆっくりと加速をつけながら蜻蛉の異形の周りを走らせ始めた。
まともに行ったら勝ち目は無い、かといって隙を見つけるまで長期戦を挑むのはバイクが持ちそうにない。
そうなれば考えられるのは奇襲で無理やり相手の隙を作り出す、それしかない。
そう考えをまとめると俺は直進して速度を稼ぐと蜻蛉の異形に対して一気に突っ込んだ。
蜻蛉の異形は腰を低く落として俺と銀のバイクを待ち構えた。

俺は一度体をバイクの前方に多いかぶせるかのように腰を折りそれから思い切り体を後ろに引きながら立ち上がり
バイクをウィリーさせて一緒に跳上がりバイクのタイヤから全体重をかけて蜻蛉の異形に叩きつけようとぶつかっていった。
「ディヤァアアッ!」
蜻蛉の異形の低く構えていた体がバネの様に動き出す。
回転しながら勢いをつけてバイクの横腹に回し蹴りが叩き込まれると銀のバイクはグシャリという音を立てて真ん中からへの字に拉げた。
「む!?」
奴は驚いたような表情をした。
当然だ、何故ならバイクに乗っているはずの俺が何所にも居ないのだから。
俺はバイクで突っ込むと同時にバイクの上からジャンプしてはるか上空に跳上がっていた。
「たぁあありゃあああああ!!!」
俺は追い風を背に回し蹴りを放った直後の僅かな隙を見せた奴の体に向かって片足を突き出して急降下した。
片足が奴の胸にゴグンとめり込み後ろに吹き飛んだ。
蜻蛉の異形は地面に背中から落ちて大の字に倒れた。
そのまま起き上がってくるな、そう心に念じた。
バイクは奴に蹴り壊されて拉げて使い物にならない。
連戦による度重なるダメージと上空からの攻撃の多用でもう戦いは愚か逃げる力さえ残っていない。
今奴がもう一度立ったら負ける、だから立つなと念じる。
その想いはまるで災いを前に神に祈る人のように切実で必死だった。

「実に愉しいな」

俺は体をビクりとさせてよろけて片膝をついた。
奴が地面からムクリと起き上がってくる。
「そう思うだろう仮面ライダー
さあお互いもっと愉しもうではないか?」
俺は絶望的な気分で両膝をつくとそのまま前に倒れこみそうになり片手をついた。

「どうしたのだ?まだ諦めるには早いぞ
さあ立ち上がって向かって来い仮面ライダー!」
無茶を言ってくれるものだ。
こちらはもう立つ力も無いくらいガタがきているというのにだ。
俺にはもう心まで完全に折れないように睨み付けるのが精一杯の抵抗だった。

俺が立ち上がるのを期待して待つかのようにゆっくりと奴が歩み寄って来る。

その時、俺たちの間に割ってはいるかのごとく空の上から女の子が降ってきた。
「……は?」
女の子はトンっと着地すると
その女の子はお人形のようなかわいらしい顔で
黒く艶のある髪をおかっぱに切り赤くてきれいな振袖を着ていた。

「なんのつもりだ小娘
よもや我等の戦いの邪魔をしようというのではないだろうな?」
俺がぽかんとしていると蜻蛉の異形が女の子に対して静かな口調で
だが怒りをあらわにして話しかけた。
「べつに」
女の子は蜻蛉の異形の方に振り向くとそっけなく答えた。
「ならば邪魔だ退け、さもなくば女子どもといえど容赦は…」
「ホークさまがうらぎりもののウェイブをしまつするためにかいぎをひらくからおしえにきてあげただけ
はやくこないといいところはみんなとられちゃうよ?」
女の子がそういうと蜻蛉の異形はすっと怒りを潜めてバツが悪そうに立ち止まった。
「む、それは失敬した
なるほどそれは戻らぬ訳にはいかんな
もうしばし戦いを愉しみたかったが致し方あるまい
次に逢う時はもっと強くなっていろ、仮面ライダーよ」
そういうと蜻蛉の異形は羽を広げて何所えとも無く跳び去った。
残された俺に女の子は近づくと屈みこんで俺の顔を覗き込んだ。
「ふうん、あなたかめんライダーっていうの?」
「ああ、なんか今さっきそういうことになった…」
もう抗う気力も無い俺は素直に女の子の問に答えた。
「そう、じゃあねかめんライダーさん」
女の子はそういって立ち上がり後ろを振り向いて軽く駆け出すとふわりと浮いて飛び立っていった。
俺は体を支えていた手の力を抜いて地面にべったりと倒れこむと変身を解いてため息をついた。
俺は遠のく意識で今回の戦いのことを考えていた。
運良く生き残れたが次は無いだろう、俺一人では勝てないのだ。
銀なら勝てるだろうか?
いや、銀も一人では蜻蛉の異形相手に圧されていた。
だが俺たち二人は仲間だ。
俺と銀の二人で協力すればこれからだって勝ち続けることが出来るはず。
そうだ、奴等は銀を始末するために作戦会議を開くとか言っていた。
早く銀に会って知らせなくてはいけない。
とにかく一刻も早く銀に会わなければ。
「あ…その前にあのバイクの墓作ってやらなくちゃ…」
最後にそう一人ごちて俺の意識は途絶えた。

7話「狂える氷刃」

――痛い、痛いよ

何所が痛むんだ?可哀想に、すぐに俺が何とかするからな

――兄サん、そこに居るの?

ああ、ちゃんと傍に居るさ、どうしたんだまさか目が…?

――ワタシの声、変じャナい?ちゃント聞こエテる?

もちろんさ、お前の言葉ならどんな言葉だって聞き逃すものか

――ワタし、どうなっちゃッタの?

いつもどおりだ、何も心配は要らない

――兄サんの嘘ツき

嘘じゃない、必ず俺が何とかするから心配は要らないんだ

――もウ無理だヨ

まだ間に合う

――だってサッき見ニ来た看護婦さンをワたし

お前のせいじゃない

――あんなにやさシくしてくれタノに

事故だったんだ
お前は何も気に病むことはないんだ
俺がなんとかする だからお前は今までどおり暮らしていればいい

――無理だヨ、だってもう止まラナい

何かまだ方法があるはずなんだ

――死ニタい

そんなこと言うな
辛い病に犯されてもお前は生きることを諦めなかったじゃないか
どんなに辛い症状が出ても力を振り絞って笑って生きようとしていたじゃないか

――もウ駄目ダよ

お前が生きていくために俺が何だってする
だからお前は笑って生きてくれ、頼む

――兄サん、最後にオネがいがあるの

ああ、どんな願いだろうと聞いてやる
だから最後なんて言うな

――殺シて

それは、俺の世界が凍て付いて終わる前の最後の記憶。

晴れと曇りどっちともつかないがあえて言うなら曇り寄りのどうにもはっきりしない空の下
俺は『ω』の二階の自分の部屋でせこせこと携帯電話を弄っていた。
「やっぱなんも連絡なし、か」
案の定携帯に銀からの連絡が着ていないことを確認して頭を抱えてため息をついた。
蜻蛉の異形、アウトリヴァーレとの戦いから数日がたっていた。

俺は道路の上で数時間に渡って寝込んでから目を覚ますと
への字に拉げた銀のバイクを引っ張って、というか引き摺って『ω』へと帰り
その後暇があればずっと銀と連絡を取ろうとし続けているのだが一向に連絡が取れない有様だった。
銀に何かあったのだろうか、アウトリヴァーレの言っていたウェイブを倒す為の作戦会議の存在が脳裏をよぎる。
ひょっとしたらその作戦とやらに嵌って既にという考えが脳裏をよぎる。
「いや、連絡が取れないからってそう決めつけるのは気が早いよな
あの銀がそうそうどうにかなるはず無いよな
多分なんとかしてる…はずだ」
不安を無理やり振り払おうとするかの様に一人ごちた。

「あれ、雅またどっかいくの?」
下に下りると店内の掃除をしていたアカリが声をかけてきた。
「ああ、ちょっとな」
適当にアカリをあしらうと扉を開けて相棒に跨って走り出した。

「とりあえずまた何軒か当たってみるか…」
銀との連絡が付けられず八方塞の俺は昨日から銀が泊まっていそうな
ホテルや旅館の近くで聞き込み等をして銀を探しだそうとしていた。
とは言うもののいきなり街中で警察手帳も持ってない赤の他人が話しかけてきても
キャッチか宗教の勧誘かナンパかと思われるのがオチな訳で聞き込みは一向に進まなかった。
収穫と言えば女の子の携帯のメアド一つ、さっき試しにメール出してみたら女の子からメールは返ってこずに50過ぎのおばさんから返事が来た。
息子さんが未だに結婚しなくて悩んでいるというので最近は婚期も遅くなっているし気長に見てはどうだろうかと返信しておいた。
つまるところ今のところ収穫は全く無い。
「はぁ…」
俺は相棒に跨ったままヘルメットを外して髪を掻き毟ってから頭を抱えた。
ポツリ、と顔に水滴が当たる。
上を見上げると再びポツリと顔に水滴が当たり雨が降り始めたのだと悟った。
「…帰るか」
雨が降れば人通りも少なくなって聞き込みもさらにしづらくなるだろうしと考えて
『ω』に帰ろうときびすを返す。

と、その時通りの向こうから金属が拉げるかのような轟音が鳴り響いた。

あれからどれ程彷徨っていただろうか。
奴の息の根を止めようと放った一撃は、潜んでいた山田の子飼いの部隊に防がれ
俺はそのまま無様にも敗走したのだった。

それからずっと碌に眠りもせずにどうすれば奴の息の根を止められるのかを考え続けていた。
ずっと座り続けていた駅前のベンチは人肌で生ぬるい熱を帯びていた。
「ちょっとちょっとーお兄さんってばー!」
けばけばしい化粧で顔を塗りたくり鼻が曲がるほど香水の香りを振りまく女が俺に話しかけていた。
以前、この体に神玉が埋め込まれる前はそういったものはあまり気にならなかったが
今は感覚が鋭すぎてそういったものがやたらと気になるようになった。
その化粧と作り笑顔の裏に隠されたものに常に気を使っているのだから尚更だ。
「ねーお兄さんちょっと私とーお話しないー?」
女は屈みこんでこちらの顔を媚びる様な視線で覗き込んだ。
「是非、俺も丁度話をしたかったんだ、君のような人と」
慣れない言い回しに舌を噛みそうになる。
作り笑いで頬の筋肉が痙攣しそうだ。
「えーマジでー?嬉しーそれで話って言うのはー
お兄さん顔はかっこいいからーちゃんと綺麗にしたらきっとモテルと思うのー
だからー私がモデルとかそういう仕事を紹介してあげようと思ってさー」
やたらと間延びした鬱陶しい喋り方の女だった。
「そうか、でも俺はもっと別の話が聞きたいな」

「ん、いいよいいよーどんなこと聞きたいのー?」
「例えば、君の入れ込んでいる男の居場所を教えてくれないかい?」
俺は口の前で両手を組んで笑みを浮かべた。
多分我ながら陰鬱な笑いだっただろうと思う。
この体になってから俺が自然と浮かべる笑みはいつも陰鬱な物だったからだ。
「…あららー、ひょっとしてバレちゃってるー?」
女は手に口を当てて快活に笑って見せた。
「何のためにこんな所でじっとしていたと思っているんだ
もっと早く出て来い、顔が割れているんだからもっと前から見つけて居ただろ」
「でもさーあんたも馬鹿だよねーこんな見つかりやすい場所で待ってるなんて、囲まれて襲われたりしたらさーどーすんの?
何人来ようと勝てるつもりですかー?」
そう言うと今度はさっきと打って変ってにんまりと弧を描くように口を歪めて笑った。
「でもお前は一人だろ?」
俺がそうポツリとつぶやいたのを聞いて女が苛立ち眉を潜めて背筋を伸ばしてこちらを見下ろす。
「なんでそう思うの?」
「こんな人の多い所で襲い掛かるのはその存在を隠して行動している組織にとって本来なら御法度、組織の規則に反する行為だ
態々それを破ってまで俺に襲い掛かるのはお前みたいな頭の軽そうな馬鹿くらいだ
今此処に居る組織の者は多くてもその尻馬に乗ったさらなる馬鹿が2、3人
その程度なら俺一人で軽く下せる。」
女はまるで紙を丸めて捨てる時のように顔を歪めた。
「ふん、私は一人でも十分強いから関係ないしー」
ハッタリは通じないと分かったのか
ふわりと後ろに飛ぶと、右手の神玉を見せびらかすかのように振りかざし異形の姿へと変身した。
周囲を歩いていた雑踏がそれを見てあるものは悲鳴を上げて、またあるものは驚愕の表情を浮かべた。
逃げようと走りだす人と何が起こったのかを知ろうと向かってくる人
そしてわけも分からず棒立ちになる人とがぶつかり合いもみくちゃになっていた。
このまま戦ったら怪我人が出るだろうということは分かっていた。
だが俺にとって今最も重要なのはこいつから奴の、山田の居場所を聞き出すことなのだから。

そのためなら誰がどうなろうと関係ない。
既に復讐の為に
いや、それ以前から組織の一員として働いて
血に汚れたこの身がさらに汚れようと何を構う必要があるだろうか。
他人を想う為の心など妹の躯の前で復讐を誓ったあの日から疾うに凍て付いた。

どうせ顔は完全に割れている、今更どれだけ騒ぎや被害を出そうとも関係ないのだ。
いっそ雅の周囲の人間も一人くらい被害に遭った方が直情型の雅をこちらの思惑通りに動かし易かったくらいだ。
無駄な有象無象など気にせずに、奴の息の根を止めることだけを考えればよかった。
余計なことばかり考えているから敗北し、無様に逃げ延びたのだ。

先日の、あの無様な敗戦が脳裏に蘇る。

山田はだらしなくポケットに手を突っ込みながら腰を丸めて頭をかしげながら
片目をギョロリとさせて俺が何故翻意を見せたかを聞いた。
まるで妹の、雪奈のことは取るに足らないことだろうとでも言うようにそう言った。
一体他にどんな理由が要ると言うのだろうか。
そう叫び怒り狂う俺を見て奴は愉しそうに下卑た笑い声を上げた。
神玉を埋め込ま無くてもどうせ病で死ぬ命
どちらにせよ死ぬならば一応の対策を打った自分を恨むのは筋違い。
なのに道理もわきまえずに駄々っ子のように怒り狂い勝てるわけも無いのに
組織を抜けて自分に牙を向く俺が面白くて仕方が無い。
そう言って笑い続けた。
事実、俺のやってる事は愚かな男の滑稽な復讐劇に過ぎないのだろう。
俺とてそれは自覚していた。
だがそれでも止められない衝動のままにアイスエッジを構え
雄たけびを上げて怒りと憎しみで氾濫する濁流となって、奴の顔に浮かんだ下卑た笑いを永久に止めるために駆け出した。
氷刃が煌めかせて奴の首と体を永別させる為に剣を横に薙ぐ。
奴の首に刃が触れんとするその刹那に右足が跳ね上がり刃を弾かれ
それと共に両腕が万歳でもするかの様に天に伸びる。
山田は両腕を天へと羽撃く鷹のように後ろに大きく振り被り両手刀を無防備な腹へと突き刺した。

俺は黒い表皮を切裂かれてじわりと血がにじむ腹を押さえてしゃがみ込んだ。
そして立ち上がろうとする俺の横に空から二つの影が舞い降り
手にある鋭い嘴で横から両太股を貫いた。
俺は痛みに呻き声を上げて再びアスファルトの上に膝を突き流れる血で赤く染めた。
もう一突きを心臓に突き刺してトドメにとでも思ったのか
それともこれから嬲り者にして遊ぼうとでも思ったのか
山田の命令で二人は両足を貫く嘴を引き抜いた。
その隙に辛うじて逃げ出したのだ。
妹の仇に背中を見せて嘴に貫かれて穴から赤黒い血を流し力の抜けた
両足を引きずりながらのろのろと路地の裏に逃げ込んだのだ。
いや、逃げ出したと言うよりも見逃されたと言った方が正確だった。
奴等は威勢良く啖呵を切って仇に飛び掛かり
その結果無様に地に伏して逃げ出した俺を嘲笑っていたのだ。
今は逃げるしかない、勝機を待つしかないんだと、そう自分に言い聞かせて逃げ出した。
しかし無様に逃げ続けていくうちこの身を焦がす様な自分への怒りの中で気付く
それは甘えだったのだという事に
俺はあの場で刺し違えてでも奴を[ピーーー]べきだったのだ。
くだらない事にばかり囚われているから逃げる等という考えが出てくるのだ。

両足が何だと言うのだろうか、指が一本でも動くのなら
その指一本で奴を殺そうとするべきなのだ。
凍て付いて終わってしまった俺の世界は、全て奴への復讐の為にだけ在ればいい。
どうせあの日から続く激しい怒りと憎しみに思い出さえ塗り潰されて
もう妹の笑顔さえ碌に思い出せない。
ならば復讐の刃を鈍らせる余計な物など全て捨ててしまおう。
ただ復讐の為だけにこの身全てを費やそう。
俺は正義のヒーローでもなんでもなく仮面の復讐騎【仮面ライダー】なのだから。
「変!身!」

啄木鳥の異形、アウトウッドペッカーは啄木鳥の頭の形をした右手からその鋭い嘴をこちらに向けた。
「あーもーしつこいなー!」

遥か上空にて飛び回る奴の右手から啄木鳥の嘴の如く鋭い弾丸が
雨霰と降り注ぎアスファルトの道路を破壊していく。
俺はそれを寸でのところで地面を転がり避ける。
そのまま回転の勢いで立ち上がると信号機に向かって糸を吐き出した。
ピンと伸びきって張り詰めた糸は縮まろうとゴムの如く俺の体を引っ張る。
俺はそれに合わせて跳ね、一気に信号機の頭に向かって宙を舞う。
そして片手で信号機に指を突きたてそのまま上に跳び乗る。
予想外のトリッキーな動きにアウトウッドペッカーの対応が遅れるのが見える。
奴は慌てて右手の照準をこちらに向けるがその時にはもう信号機の上を跳退いていた。
俺は空中で奴が無駄玉を信号機に撃ち込んでいる隙に顔の辺りまでアイスエッジを振り翳しアイスエッジを投げつけた。
「はんっ!当たるかってのー!」
投げ放たれた氷刃は啄木鳥の異形に軽く避けられてそのまま宙を行く。
アウトウッドペッカーが俺に向き合い右手をこちらにかざし狙いを済ましたのを見て
俺は仮面の下でニヤリと哂った。
宙を行ったアイスエッジに貼り付けておいた糸がピン、と張り詰めるのを確認すると
そのまま口から伸びた糸を手に取り思い切り引っ張った。

「アギィ!?」
糸に引き寄せられて戻ってきたアイスエッジはアウトウッドペッカーの左足を切裂き
切っ先から血の雫を撒き散らした。
鳥のように細く鋭い爪を持つ左足が地面に落ちるのと同時に
糸に引かれたアイスエッジが再びこの手に収まった。
「ひ…ひぃ!」
アウトウッドペッカーは膝から下の無い左足を見て青ざめた顔をすると
肩から生える羽を慌しく羽撃かせ一目散に踵を返してビルを超えて飛び立った。
「…逃がすか!」
俺は糸をビルの上に立つ看板に放つとそれを手繰り寄せて一気に屋上まで登った。
屋上からアウトウッドペッカーの飛び立った方向を見ると距離にして既に100m近く差をつけられている。
流石に鳥類の神玉を持った相手に逃げに回られてはいくら相手が手負いであろうと
普通に走っていては早々追いつけるものでは無い。
だからといって奴を逃がすつもりは毛頭無い。
「…――シャっ」
助走を付けると道路向かいのビルに飛び移り奴を追う。
無論このまま追い続けてもても追いつけないのはわかっていた。
ただ少しでも距離を離さずに奴を追うための足を見つける必要があった。
追跡の為にはかさ張ると感じ、アイスエッジをその場に捨てると硝子細工のように砕け散った。
そして一歩歩み出て、ビルの屋上から真下の道路を見下ろす。
「あれだ」

真下の道路を右方向から疾走する真っ赤なスポーツカーに目を付けると
ビルから飛び降りてスポーツカーの真上に飛び乗った。
車の上で強い風に煽られるのを意に介さずに屋根に手刀を突き刺す。
手の先が車内の暖かい空気に触れた。
そして気合を入れると、まるで大型動物の悲鳴のような音を立てながら車の屋根を斜めに引き千切った。
中に居た運転手の男が突然吹き込んだ風と異音に訳が分からないと言った風に上を向くとこちらと目が合い、その男は蛇に睨まれた蛙の如く硬直した。
「アレが見えるか?」
俺は引き裂かれた屋根の間隙から無理矢理上半身を捻込んで男の襟首を掴んで睨みを効かせてから
空の彼方を行くアウトウッドペッカーを指差して言った。
男は歯をガチガチと鳴らす程震えながら短い悲鳴のような声を出して三度首を縦に振った。
「追え」
それだけ言うと男はこちらを絶対に見ないようにしながら標的を追うことにだけ専念しだした。
その様子を見て満足すると俺は再び車の上に戻り上空を行く異形の鳥を凝視した。
とりあえず奴を追うための足として車を手に入れたが、たとえ最新のスポーツカーと言えど上空を行く怪人のスピードにはとても追いつかない。
だからこの車の限界を超えた速度を出す必要があった。
車の屋根の上で膝をつき、両手の指先をそれぞれフロントガラスの上の角の辺りに突き刺し、肉食獣が獲物に飛び掛かる寸前んの時のように低く低く構えた。

神玉には様々な種類がありその効果は千差万別であり
量産されたタイプの神玉と言えども同じような変化が起こることはまず無かった。
それでも神玉がもたらす効果はある一つの共通点があった。
それは『強化』。
神玉のエネルギーは様々な現象を起こすがその全ては対象のモノをより強くする方向に向かっている。
硬さ、腕力、感知能力、生命力、そして速さ。
神玉のエネルギーを帯びたモノは良くも悪くも、望む望まないに関わらず必ずより強力な方向へと『変身』するのだ。

今、俺が行っているのはそのエネルギーをこの車に流してその特性を『強化』することだった。
普段バイクを変化させているのもこの方法だ。
ただバイクと違うのは車が自分に対して大きすぎた事だった。
恐らくエネルギーが足りずに完全に変身させきることは不可能だろう。
それでも爪を突き刺した部分からスポーツカーの赤い装甲を
金属をぶつけ合うような音を立てながら少しずつ氷が覆ってい『強化』が進行し続けていた。
完全に固まりきらずに不完全な『強化』が行われた脆い部分を吹き付ける風が削ぎ落として行った。
車の端々から拳大の氷の塊が地面に落ちて脳を突き刺すような鋭い音を立てて砕け散り
そしてまるで何も無かったかのように粉々になって消えていく。
バケモノを屋根に乗せて凍りながら走る異常な車を見てほとんどの車が向こうからこちらを避けていた。
そうして車道を進んでいくにつれて段々と体に吹き付ける風が強くなり速さが増していくのがわかった。
もう少しで『強化』も終わり不完全ながらもこのスポーツカーの『変身』が終わる。
完全にスピードに乗りアウトウッドペッカーを追う作業は全てが順調に進んでいると思われたその時
前方の十字路の右の方向から大型の車、おそらくトラックか何かがかなりのスピードで走ってくる音を感知した。
俺はそれが追跡の障害になりかねないと考えて焦り、すぐに屋根の間隙から運転手の男に向かって言葉を発した。

「何があっても絶対に止まるな」
そうして男の返事も聞かずに屋根にうつぶせにへばりついた。
予想したとおりに十字路から大型の運搬用トラックが飛び出してくる。
俺はトラックとスポーツカーが交差するまでの一瞬を全て『強化』を終えるためにスポーツカーに集中した。
氷に覆われずに僅かに残っていた部分にも遂に氷結するか否かという時に目の前にトラックの荷台が眼前に広がった。
刹那、金属が拉げる轟音が鳴り響いた。
いや、正確には拉げるだけでは無かった。
『変身』を終えたスポーツカーはトラックの荷台に突っ込み、そのまま突き破ったのだ。
俺は『強化』されたスポーツカーを立ち上がって見下ろし、その俺は十分な速度と強度に満足した。
そうして上を見上げると既にアウトウッドペッカーは遥か頭上の位置にまで近づいていた。
飛び行く異形の姿は既に弱弱しく足から流れる血もポタリポタリとごく少ない量だった。
もはや奴は長くあるまい、ならばこのままアジトまで追跡しようという案を捨ててこの場で少しでも情報を吐かせるまでだと意気込む。
俺は口の中でネチャリ、と言う音を立てて粘着質の糸を作り上げた。
何千何万と繰り返した動作で一瞬で先端を舌で探り当てその先に意識を集中させる。
すると口の中に切る様な冷気が現れ、糸の先端の一点に集まっていき氷の杭が創り上げられる。
上空をまるで溺れた人のようにもがいて飛ぶ異形の鳥を見上げると口の部分の装甲が一瞬にして倉庫か何かのシャッターの如く開き
装甲の中の口から勢いよく糸を吐き出した。
糸の先端の氷杭がアウトウッドペッカーの腹を貫くと俺は糸をピン、と弾いた。
それを合図にアウトウッドペッカーの体内に突き刺さった氷杭が花の様に返しを広げ咲き開いた。
その間も車は走り続けアウトウッドペッカーは糸に引かれて地面に引きずり降ろされ
そして道路に叩きつけられ砕けたアスファルトと血と肉片を撒き散らしながら擦れた音の細く長い悲鳴を上げた。
「止めろ!」

その様子を見て反撃する力を完全に奪ったと判断し運転席の方を一瞥して一声かけると
頭を伏せていた運転手の男がビクリと体を震わせてブレーキを踏みこんだ。
止まった車から降りて地面にゴミのように倒れているアウトウッドペッカーの方へと足を進める。
地に引き摺り下ろされた異形の鳥がか細く呻き声を上げているのを見て
まだ喋れるのなら尋問は十分可能だとわかり胸をなでおろした。
「山田が何所に居るか言え、楽に死にたければな」
俺はアウトウッドペッカーの前に立って顔を覗き込むように見下ろすと簡潔に用件だけを言った。
アウトウッドペッカーは力の無い虚ろな目で何かを口をボソボソと動かして何かを言おうとした。
それを聞き取るために屈み込んで言葉に集中しようとしたその刹那、奴の目に力が戻り右手が弾けるように動いた。
今にも砕け散りそうな腕を振り上げ嘴を撃ち込んで来た。
一瞬怯んだ隙にアウトウッドペッカーは俺の横を抜けて転がるように先の無い片足を両腕で補って駆け出すと車の方へと向かった。
『強化』された車の力で逃亡するつもりなのが見て取れた。
奴も満身創痍だったが俺にももう一台車を『強化』して追跡する力は残っていない。
車に乗り込まれる訳には行かないのだが振り向いたときには今にも車に乗り込もうとしていた。
俺は舌打ちをする間も惜しんで糸を生成するがもはや間に合いそうになかった。
その時だった
強い風が顔に吹き付けたと思うと、アウトウッドペッカーが二度と飛べるはずも無いほど折れ曲がりボロボロになった羽を翻して宙を舞うのを見たのは

「おいおっさん!大丈夫か!?」
いつの間にか車の横に変身した姿の雅が居た。
アウトウッドペッカーを蹴り飛ばして車の中の男を助けようとしていた。
肩を組んで車から男を引きずりだした雅を車から出てすぐに、恐慌状態に陥った男が突き飛ばそうとした
しかしビクともせずに男の方が逆に弾かれて倒れこみそのまま悲鳴を上げて這うように逃げ出していった。
仮面の下から戸惑いを滲み出しながら雅がこちらへと歩み寄る。
「…よう銀、連絡取れないから心配してたんだ」
俺は神玉が暴走して爆発したアウトウッドペッカーの放った爆風を背に雅と向き合った。
余計なことを、と思った。
まだ何一つ情報を引き出せて居ないというのにトドメを刺されてしまった。
「あれ、お前がやったのか?」
そう言って雅は俺が『強化』した車の方を親指で指す。
「ああ、バイクと同じ要領で出来る
あのサイズだと色々と無理が出るから滅多にやらないがな」
その時の俺はどうすれば山田に辿り着けるか策を考えるのに一杯で話半分に適当に受け答える。
「車の中に居た男はなんだ?」
雅は口調を尖らせて言った。
「協力者さ」
「そうは見えなかったけどな」
「仕方が無いだろう
相手が相手だ、多少強引な手も必要になってくる」
「向こうで真っ二つになってたトラックも強引な手の内か?」
「…そうだ、奴等を相手にするにはこの程度の被害は」
「ふざけんなよ」
雅がこちらの言い分をピシャリと遮った。
「あれじゃアウトロンとやってる事が何も変わらないだろ」
「違うさ」
「違わない!」

雅が変身を解き俺の肩を掴んで怒鳴る。
俺は仮面の下の険しい表情を見て
『ああ、こんな顔もするのか』
とそれが自分に向けられた表情だということも忘れて他人事のように思った。
「お前も言っていたろ、アウトロンから人類を守るために戦っているって
だったら関係ない人を傷つけるような戦い方は…」
「そうだな、俺とお前はここまでだ」
「そうかわかってくれ…は?」
このままこいつを騙して駒として使っても俺の動きを制限されるのでは意味が無い。
たとえ俺に離反しても放って置いてもアウトロンと敵対さえしていれば俺としては問題ない。
こいつの相手をしている内にアウトロンに隙が出来ればこいつを助けた見返りとしてはそれで十分だ。
「お前はお前のやり方で勝手に奴等と戦っていればいい
俺は俺でやることがあるんだ
お前のやり方に付き合っている暇は無い」
「え、あ…いやだから俺は…こんなやり方じゃアウトロンと同じに…」
「関係ない、俺は俺の目的さえ果たせればそれでも一向に構わない」
そう言うと俺は肩にかかっていた雅の手を振り払った。
「それでも俺のやり方が気に入らないなら俺を倒して止めればいい」
「そ、そんなこと出来る訳が…」
雅はうろたえしどろもどろに答えようとするが
最後まで言いきるのを待たずに俺は雅へのただ一つの要求を再び言った。
「なら黙っていろ、俺のやり方に口を出すな」
「口だって出すさ!当たり前だろ!?」
「理解出来ないな、そこまで干渉される筋合いは無いぞ」
そう言うと俺は雅に背を向けて何所へとも無く歩き始めた。
通りの向こうに去ろうとした瞬間後ろから雅が叫んだ。
「だって俺とお前は仲間だろ!違うのか!?」
「ああ、違うさ
最初からずっとそうだ」
それで会話を打ち切って振り返らずに歩き続けた。
もう後ろから雅の声が聞こえてくることはなかった。


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